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テクノロジーと医療現場の壁

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IoT、AI、ロボット。最新テクノロジーが様々な分野で革命を起こしている。医療の分野に関しても例外ではないだろう。

医療とテクノロジーについて考えるとき、私は決まって母とのある会話を思い出す。

母は看護師なのだが、ある日、研修の一環として、技術開発を行う会社の見学に行っていた。詳しくは聞いていないが、ロボット開発か何かの部署で、実際にロボットが動くのを見せてもらったそうだ。その時のことをこう話していた。

「すごいな〜と思って見ていたんだけど、そのロボットは5回に1回くらい誤作動を起こすのよ。指示と違う動きをしたり、突然止まっちゃったりね。それでもすごいのは十分わかるんだけど…でも、看護師の立場からすると、そんな確率でエラーを起こすのなら、怖くて使えないなって。1回の不具合でも、患者さんにとっては命に関わる一大事になるからね。」


そして母は、今日のは医療用じゃなかったけど、私の職場でロボットが働くのはまだ先かな〜と続けた。

確かにそうだなと思った。パソコンが突然固まったとしても、ああ、困ったなで済むが、1分1秒を争う医療現場においては、命取りになる。
どれだけ便利で効率的な機械だとしても、ほとんど100%不具合の起きない、正確で安全なものだとわかっていないと、導入できないのだ。

また、安全性が認められた機械が完成したとしても、それを誰が使えるのか、という、別の問題も出てきそうだ。医師不足、看護師不足が嘆かれている中、普段の仕事にプラスして新しい技術を覚える時間を確保するのは、普通の病院ではなかなか難しいだろう。


このように、素晴らしいテクノロジーを搭載した機械が発明されたとしても、実用化して、個々の病院まで浸透するのには、とても長い時間がかかりそうだ。
“新しいものが出たから試してみよう、使いながら改善していこう”というのが簡単にはできないからだ。医療の分野においては、この点が、大きなネックになりそうだと感じた。


ただ、逆に、医療現場で“試す”という行為を可能にした最新技術もあるようだ。

Bio-Texture Modeling®(生体質感造形)は、CTやMRIなどから患者の各部位の生体モデルを作ることができる技術で、こらにより、医師の手術の事前シュミレーションを可能にしている。これによって作られる臓器のレプリカは、本物に見た目や質感がそっくなだけでなく、切ると血が出るそうだ!これには本当に驚いた。

そしてこの技術は、医師や研修医のためだけだなく、患者のためにも使われている。患者は自分の臓器のレプリカをもとに、医師から病状や手術内容の説明を受けると、どのような病状で、どのような手術をするのかを、目で確認することができるため、自分のことだと認識しやすくなる。患者が病気と向き合う手助けにもなっているそうだ。


このように、医療現場におけるテクノロジーの進歩に関して、壁は存在するが、最新技術がその壁を乗り越えていくことで、より良い現場となっていくことを願っている。